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「挨拶・スピーチ」

人それぞれ、仕事でプライベートで、人生のいろいろな場面で人前で話す機会があると思う。

そんな時「もう勘弁して、他の人にお願いして」という人がいれば、「いいよ」と気持ち良く受ける人もいるだろう。

私は後者だ。

私は若いうちから、そういう機会があればできるだけしゃべるようにしてきた。

若い頃なら、緊張で言葉に詰まり、しどろもどろになろうが、下手くそでも「まだ若いから」と、冗談、愛嬌、で済まされるが、そこそこ年を取ってから下手くそだと格好がつかない。

こういうことは「慣れ」だと思っている。

若い頃から恥をかきながらでも経験を積んでいけば、少しは慣れてきて「それなりに話せるようになるのではないか」と考えていた。

 

去年の6月頃、私が所属している不動産協会が、元日本テレビの女子アナウンサーに講師として来ていただき、

「声と話し方&聞く力を磨いてコミュニケーションアップ!」という研修会を開催した。

私は今年の1月3日に開催した「還暦の集い 中学校同窓会」の幹事を引き受けていたので「ひょっとしたら人前で話すことがあるかもしれない」と思い、その研修会に参加した。

・腹式呼吸 ・発声練習

・場面により、声の高さと大きさを使い分ける

・きれいな発音のための準備(顔・舌・唇のストレッチ)

・早口言葉

話し方

・抑揚をつける

・強調するには

声を高くする  ゆっくりと話す  強く発音する  間を取る

・毎日3分「読む」訓練をすれば、劇的に変わる!

・話し始める前に、一呼吸置くことで、自分のペースに持ち込める

・がんばって少し高い声で話す 「ソ ♪」の音の高さ

・5秒に1回、句点(マル)で区切る

だらだら話さない

・「えー」を言わない

・言い終わりで口を閉じる

・あがり症の人は一週間カフェインを絶つ

・本番前に咽喉が渇いたら「水」を飲む

なるほどなあ!

プロは日頃からこういう練習をしているんだなあ、上手くなるはずだ。

今まで「上手に話すには?」

「こういう練習をすればいい」

「話すときはこういうことに気をつけて話せばいい」

というような方法を具体的に教えてもらうことはなかったので、とても勉強になった。

 

「政治家で話上手な方は、演説をしながら、足でリズムを取られている」とも言われていた。

「池上さんはこういうふうに話されるでしょう」

と講師の元女子アナウンサーはそれをみごとに再現して見せてもくれた。

 

「なるほどなあ、練習、努力すれば上手になるもんなんだなあ!」と思えた。

 

秋になり、還暦を祝う同窓会の打合せも佳境に入り、私は「開会挨拶」を仰せつかった。

「光栄なことじゃないか!」

300人いた同級生の代表として開会の挨拶をさせていただけるなんて。

 

同窓会まではあと1か月半ほどの時間があった。

 

私は先ず、話す内容を考えた。

還暦、60歳、もう何十年もそれぞれが生きてきた道は違う。

どんな話をすればいいのだろう?

あれこれと幾通りかの話を考えた末、最終的に、ある同級生どうしの心温まるエピソード、友情を紹介させていただくことにした。

 

話の内容が決まると、自分の部屋の鏡の前で実際に何度かしゃべってみた。

起承転結、話してみると優に5分を超す長さになったたので、削れるところは削り、なんとか5分ぐらいに収まるように修正を重ねた。

そんなシミュレーションに並行して、元女子アナから教わった上記のストレッチ、発声練習、早口言葉、抑揚、間の取り方、毎日3分間の音読の練習もした。

 

余談であるが、この3分間の音読練習は思わぬところに効果が出た。

昨年12月の末に、本業の不動産の契約があった。

契約の際は重要事項の説明に始まり、契約書の説明と都合1時間30分ぐらいは話すようになるのだが、いつもなら、最後の方になると、話すことに疲れてきて呂律が回らなくなってきたりするのだが、その時は違った。

後半になっても「しゃべりがスムーズ」だった。

「あーそうか!」毎日3分の音読で話す体力がついたのだなと実感できた(笑)。

 

鏡の前のでシミュレーションを重ね、「よし、本番でこれだけできれば大成功!」

というところまではきた。

あとは本番でどうなるか

緊張もするだろうから「うまくいくかどうかはやってみないとわからない。」

 

「当日のその場の雰囲気もあるだろうから、話す言葉はある程度変わってくるかもしれない」

と柔軟に考えてもいた。

 

5年ぶりの同窓会当日

卒業して45年、初めて参加される人もいた。

会が始まる前からあちこちに輪ができ大盛り上がり。

会場は和やかな雰囲気に包まれていた。

 

司会者の氏名を受け、いよいよその時がきた。

私自身も懐かしい友達に会えて和んだ気持ちのまま、リラックスしてその場に立てた。

 

もうその時は何も考えていなかったのだが、

「みなさん、あけましておめでとうございます」

「始まる前からこんなに盛り上がっていて、幹事をやってよかったなと思っています」

と自然に言葉が出てきた。

 

そこからスムーズに事前に考えていた話に入っていけた。

 

途中から、自分自身、滑らかにしゃべれていることもわかった。

 

同級生の友情のエピソードを話し

・・・・・

 

「友達、同級生っていいものですよね」

 

と言った時、

私には、静まりかえった会場全体が「真っ白」に見えた。

というか、この時の情景は言葉で表現できない。

 

同窓会が始まり、みんなに酒を注いで回っている時、

「ええ挨拶したな!」

「どうしたら、あんなに上手に話せて、ああいう間が取れるの?」と感心されたり、

「思わず涙が出そうになったわ!」という女性もいた。

 

次の日も「あの挨拶良かったで!」「ええ話を聞かせてもらったわ」

「あの挨拶でみんなの心が近くなりましたね」

というようなメールをいただいた。

 

5分間の私の時間

存分に演じ切れたと思う

 

みんなの心に響き、心に残る話はなにか

 

考え抜き、話し方の練習も重ねてきた。

 

私の思いが伝わったような気がしてうれしかった。