「二人だけの同窓会」 50年ぶりの再会 友達って、いいものだ

彼とは小学生の頃よく遊んでいた。
中学生になると、私が隣の学区に引っ越したこともあり、だんだんと疎遠になっていった。
高校に進学するころになると、二人の進路は全く異なり、それ以降、会うこともなくなっていった。
20歳の頃、友達から、彼が仕事中の事故で、障害者になり車椅子での生活になったと聞いた。
その後、社会に出ると、私が転勤で岡山を離れたりしたこともあり、彼の話を聞くこともなくなっていた。

中学を卒業して45年が経ち還暦を迎えた時に同窓会があった。
その際、同級生に送った案内状に幹事の私の連絡先とメールアドレスを記載していた。
そうしたところ、思いがけず、彼からメールが送られてきた。
「案内状に君の名前を見て、子供の頃、よく遊んだことに思いを馳せています」というような内容だった。
私は、うれしくて、すぐに「メールありがとう」「私も懐かしいです、また機会があれば会いましょう」と返信をした。
その時に、彼が探しているという同級生のことで、何度かやり取りもした。

還暦の同窓会に彼は出席しなかったが、私は挨拶をする際、「彼とメールでやり取りした時のエピソード」や「彼と彼が探している友人との友情」などの話をした。
このことは、出席していた彼の友人を通じて彼にも伝わった。

同窓会が終ると、私は彼に会いに行こうと思っていたのだが、コロナ禍になり、それは叶わなかった。

それから、5年後の昨年の秋、私は彼に連絡を取り会いに行った。
中学校を卒業して以来、50年ぶりの再会だった。

約束をした珈琲店に行くと、車椅子に座っている彼の後ろ姿を見つけた。
私は「やあ、久しぶり」と彼の後ろから肩に手をかけた。
彼も「久しぶり」と応え、握手をした。
50年ぶりに会った彼の外見は、随分と変わってはいたが、子供の頃の面影は残っていた。
もともと子どもの頃によく遊んでいたから、久しぶりに会ったというぎこちなさはなく、スムーズに会話に入っていけた。
子供の頃の懐かしい話、近況、これまでの生き方など、話は弾んだ。
彼は当初、障害者の施設に入っていたが、「自立するためにはどうしたらいいのか」先生に相談して、そのアドバイスを受けて、パソコンスクールに2年間通い、パソコンのスキルを身に付け、パソコンの講師として、WEBデザイナーとして、活躍しているとのこと。
その生き方を聞いた私は「頭が下がる思いがした」
話の途中「来年のゴールデンウイークに、同窓会をするから来ないか」と誘った。
彼の返事は「まだ、やめておく」とのことだった。
彼の気持ちは理解できるので、それ以上、深くは聞かなかった。
コーヒーを飲みながら、2時間近く話したかな。

「じゃあ、そろそろ・・・」「今日は楽しかった」と私が言うと、彼は、「勇気を出して電話をしてきてくれてありがとう」って言った。
私は、その言葉がうれしかったと同時に「ここまで、苦労してきたんだろうなあ」と思った。
それは、人の何倍も苦労したからこそ出てくる相手を思いやれる言葉だ。
「こちらこそ、ありがとう」「また会おう」と言って店を後にした。

今年の4月に入り、彼の方から「また会おう」とのメールが届き、同窓会の話も聞きたいとのことで、ゴールデンウイークに行われる同窓会が終わった後に、会うことになった。

同窓会が終わり、私は、出席者全員で撮った写真と名簿を持参して彼に会いにいった。
そして、写真を見せながら、私が「この人は・・君」「この人は・・さん」「・・君は、今こんなことしている」「・・さんも来てたよ」等、説明をしていった。
彼からは、「そうか、懐かしいなあ」「今も元気にしているんだなあ」「・・君や・・さんとは、中学2年生の時によく遊んでいたなあ」「・・さんとは、ちょっとつき合っていたなあ」というような話も出てきて、盛り上がった。
それから、自立するための努力、これまでの苦労、お互いの家族の話など、今回もいろいろな話をした。
コーヒーのおかわりをしながら2時間半、楽しい時間を過ごした。
話の最後に彼から夢のある話があった。
「じゃあ、それを実現するために、お互い元気でいようや」
と言って、店を後にした。

友達って、いいものだと思う。

清々しい一日だった。