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どんな時代になっても、どんな状況になっても、最後まで生き残れる人はどんな人か?
それは「変化に対して適応力のある人」だと聞いたことがある。
どんな世の中になろうが、どんなに厳しい状況になろうが、柔軟に対応できる人のことだと思うが、私は、あまり物事を深刻に考えない適度にいい加減な人、そう、なにが起きても「ケセラセラ」、そういう人も生き残れるように思います。

そして、そんな人は日頃から楽しく生きていける。
わかってはいても、私にはなかなかできないことだけど(笑)

移住は生き残りを賭けているわけではありませんが、そんな人が移住しても成功するのではないかと思います。

移住の成功事例

不動産業をしている私は、数年前にある移住者のお世話をさせていただきました。

その方は、私が学生時代に過ごした名古屋に近い東海地方の街のご出身で、かつ、移住先は私が育った町の隣りの町(現在は合併して、一つの市になっています)だったので、とても親近感を感じて、「Welcome !」「来てくれてありがとう!」って感じでお世話をさせていただきました(⌒∇⌒)

その方の移住先は、海に近い田舎の小さな町で、昭和の頃は海運業で栄えて活気もあったのですが、近年は若者は町外に出て行き人口が減少していて、外から人が移住して来られることなど、まず、考えられないような町です。

私はある開発業者に頼まれ、空き家をリフォームした中古住宅を売り出すことになったのですが、「この場所で売るのは難しいだろうな」「苦戦するだろうな」と思いました。

ところが、売りに出したところ、移住を希望されている関西地方や関東地方に住まれている方などから数件の引き合いが入ってきました。
その方々との話は、予算が合わない等の理由から、話はまとまりませんでした。

そして売り出してから半年ぐらい経った頃に、東海地方に住まれている方から引き合いがありました。

この方は焼き物の作家をされており、その仕事が可能な場所で、自分たちの予算内で買える家を、関西地方で探されていました。既に数件の物件を見には行ったのですが、決めるには至らず、当事業者がインターネットに出していた広告を見られて電話をしてくださったとのことでした。

移住先の町の情報をしっかりと把握する

物件をご案内させていただいたところ、この家なら予算に合うし、既にリフォームをしてあるので、すぐにでも住むことができる、駅にも近いし、子供たちが通う学校もあるということで、前向きに検討したいという返事をいただきました。
話を進めて行くにあたり、「この場所で焼き物ができるのか?」「町内の行事はどんなことがあるのか?」「町内会費はいくらかかるのか?」等を教えてほしいとのことで、詳しく調べさせていただくことにしました。

地元の方への気配り

この中古住宅の道を挟んだ真向かいには、長老の方が住んでおられました。

私はこの住宅を売りに出す前に長老の方にご挨拶に行った際、この方がこの町の名士であることがわかったので、この方と信頼関係を築いておいた方がいいと思い、売りに出してからも、引き合いのあったお客様をご案内する度に、ご挨拶に行き、その町のことや世間話をさせていただいていました。

長老の方を訪ねていき、中古住宅が売れるかもしれない、移住して来られる方はどんな方なのかを、個人情報に触れない程度にご説明をさせていただいてから「この町にはどんな行事があるのか、また、町内会費等はいくらなのか」を尋ねてみました。

受け入れる側の方々も不安を抱かれている

受け入れる側の方々も「どんな人がくるのだろう?」と不安を抱かれています。
ましてや、通常は外から人が入ってくることなど考えられないところですから、安心していただけるように、丁寧に説明をさせていただきました。

すると、行事は秋祭りや新年に町内の人が集まり食事会等がある、その新年会は町内の各組が持ち回りでお世話をしているとのことでした。
町内会費は毎月数百円で、それとは別に、地元の神社に納めるお金が要る、町内の新年会をするためのお金を毎月積み立てているということでした。

私はその話を聞いて、祭りはどこの町内でもあることだから普通のことだけれども、新年の食事会があること、それを行うために毎月積み立てをしているというのは、「嫌がる人もいるのでは?」と思った。

私の専門の不動産の調査の方では、「境界がはっきりしていない」「この土地から流れ出る雨水排水は、隣地の側溝を流れている」(もともとは、両方の土地の所有者が同じだった)ということがわかった。

これらのことは、古い町並みでは結構あることなので注意が必要ですね。隣地の水道管が通っているというようなことも、たまにありますね。

境界は土地家屋調査士に境界確定を依頼することにして、雨水の排水に関しては、隣地の方の承諾を得て覚書を交わさせていただくことにしました。

移住者に対する補助金はないか?

焼き物が可能かどうかは、市役所に行き条例を調べると、近隣の方の理解が得られるのであれば問題はないとのことだった。
ついでに「移住者に対する補助金はないのか?」尋ねてみたところ、「あります」とのことだったのだが、詳しく話を聞いてみると、中古住宅を購入する人は該当しないとのことだったので、私は「それはおかしい!」と抗議をしました。移住者に対する不十分な補助金制度に抗議

小さな田舎町で暮らした経験があった

それらのことを、移住を検討されている方にお話をすると、特に気にされる様子はなく「そうですか、わかりました」とのことだった。
この方は、その時に住まれていた借家への移住を経験されていて、「そのくらいのことはあるだろう」と、小さな町への移住がどういうものなのか、察しがついていたのだと思います。

露払い 

焼き物をするうえで、近隣の理解が必要になるとのことは、予め私の方で、対象になる近隣の方の家にご挨拶に行き、ていねいにご説明をさせていただき「また改めて移住して来られる方と一緒にご挨拶にきます」というところまでしておいた。特に難色を示されるような方はおられなかったので安心した。

「私は移住して来られる方ができるだけスムーズにこの町に入っていけるように」露払いをさせていただいているという思いだった。

この住宅を購入されるにあたり、他に問題になるようなことはなく、成約の運びとなり、移住して来られることが決まった。

それから、焼き物をするための工房を建てたいとのお話を聞いたので、その町内にある業者の方を紹介させていただいた。私は他に懇意にしている業者があったのですが、町内の方と人間関係を作っておいたほうが、今後なにかといいだろうと考えて、地元の業者をご紹介した。

移住 その後

売買の取引が完了して数か月後、その方はご家族で移住して来られた。
それまでの経験もあり、この町にスムーズに入っていけたようだった。
私はその物件をお引き渡しした後も時折「どうですか?」と訪ねて行っている。
焼き物の作陶、販売も順調で、町内の方々ともいいお付き合いができているみたいだ。
斜向かいに住まれている長老の方とも良好な関係が築けているみたいで、長老の方が畑で作られている旬の野菜をいただいているとのことだった。
あれから7年ぐらいの月日が経った。
あの時、幼稚園に入園されたお子さんも、今は中学生になられたとのこと。

住宅を売り出す際に、ここは日当たりがいいからと、売主の開発業者の社長が植えられていたみかんの木には、たくさんの実がなっている。

移住が成功して良かった。(⌒∇⌒)

まとめ

このお客様は、ご主人が東海地方の都市のご出身で奥様は関東地方の大都市のご出身だったので、私は当初、こういう小さな町に入っていけるのかなと心配したのですが、それは杞憂に終わりました。

お二人とも、美術、デザイン系の学校を出ておられるとのことで、移住後建てられた工房で、ご夫婦仲睦まじく創作活動をされています。

ご主人は、物静かで、細かいことにこだわらないタイプ。
奥様は、物腰柔らかく、明るくて前向きな方です。引っ越してきて早々に、幼稚園の子供会の会長に選任されていました。
また移住して来られる前に、既に住まれていたところも田舎の小さな町だったみたいで、小さな町への移住がどういうものかを理解されていたみたいでした。
これらのことが、スムーズに移住できた要因のように思います。

それと、手前味噌になりますが、私自身がこの町の隣町の出身で(現在は合併して、一つの市になりました)、この町には高校生の時の同級生がいて、たまに遊びに来たりしていて、この町がどういうところなのかを知っていたことも、少なからず、このご家族の移住の一助になったかもしれません。

移住コーディネーターがいればいい

現在、「わが町に移住してきてもらおう」と積極的に勧誘している市町村は多い。
そんな中で成功している町は、市町村の役所の方が熱心である。
移住先の情報を親切丁寧にご説明するだけでなく、移住後も、なにかと相談にのってあげたりしている。
そんな移住コーディネーターがいれば、移住を考えられている方には安心なことだろう。