稀勢の里が引退した。

大関時代、何度も横綱に挑戦しては、その壁に跳ね返され、そのたびに、日本人横綱の誕生を期待する私たち相撲ファンはため息をついたものだった。

「また、ダメだったか!」と。

 

それでも、稀勢の里はあきらめることなく稽古を重ね、ついに初優勝を果たすとともに横綱昇進を決めた。

相撲ファンは、久しぶりの日本人の横綱誕生に沸き、今後の活躍に大いに期待した。

そして、横綱として迎えた初めての場所で見事な優勝を決めた。

 

その堂々とした姿、立居振る舞い、逃げることをよしとしない、いつも真向勝負、口数は少なく決して言いわけなどしない、

稀勢の里には、日本人ならではの横綱としての、品位や風格が感じられた。

 

今朝のスポーツ紙に目を通していると、

「横綱に昇進した際には、大手の雑誌社からの取材が殺到したのだが、稀勢の里は、そういう人たちよりも、自分が苦しんでいるときも変わらず、誠意をもって取材してくれた記者たちを大切にしてくれた」。

と、稀勢の里担当の記者が明かしていた。

 

「もっともっと横綱として活躍してほしかった」「それが稀勢の里にはできた」と思えるから、

どうしても、あのけがさえなければ、あそこで強行出場せずに自重していたら、もっとしっかり休んで治療に専念していたら・・・・・・・・

と思いたくもなるのだが、それは、外野の言うこと。

 

稀勢の里は、自身の相撲道を立派に貫いたのだ。

 

「一片の悔いなし」

 

見事な引退だったと思う。

 

お疲れさまでした。

 

ありがとう。