それは郵便局での出来事だった。
私はATMでお金を引き出そうと暗証番号を押したのだが反応しない。「押し間違えたかな」ともう一度押してみたが反応しない。
「おかしいな」私は窓口に行った。
「お金が引き出せないんだけど」と言いかけたところ、いつもとは違う雰囲気を感じた。
そこには「ピーン!」と緊張感が張りつめていた。
窓口の後ろには男性職員二人が仁王立ちして、私をにらみつけ、今にも私に襲いかかってきそうだった。
「えっ、何があったの?」とその場の雰囲気が理解できない私。
すると一人の男性職員の方が口を開いた。「その口座はロックがかかっていますよ!」
「ロックされている?」「えっ、なぜ?」だれがなんのためにロックしたの?
ますます理解に苦しむ私・・・・・・・・
しばらくの間、私は回転の悪い頭をぐるぐると回し、「その、なぜ?」をなんとかひも解こうとした。
「ロック・・・・・どうして・・・・・?」
「そうか、わかった!」
(あの時だ!あのときロックしたんだ・・・・・ということはあれから引き出したことがなかったのか)
「わかりました、ロックがかかったのは今から6年から7年前のことでしょう」「そのとき私は、財布やカードを入れていたセカンドバッグを打ちっぱなし場に忘れて、盗まれたので、すべてのカードをロックしてもらえるように連絡を入れたのです」と職員の方に説明した。
その私の一点の曇りもない態度を見て職員の方も安心して納得してくれたのだろう。
その後無事にお金を引き出すことができた。
「お騒がせして申しわけありませんでした」私は職員の方に謝り郵便局を後にした。
帰りの車の中で思いだした。
そうか、郵便局の口座は、子供たちの授業料と給食代を払うために使用していたので、今まで入金することはあっても引き出すということはなかったのだ。
だから、引き出すためにロックを解除することもなく、もう何年もの間そのままになっていたのだ。
だから、あの職員の方たちは、ロックがかかっている口座から盗人がお金を引き出しにきた。
「ついに犯人が現れたぞ」と色めき立ったのだな。
おそらく、職員の机のブザーが鳴るとか、非常時を報せるシステムがあるのだろうなあ。
「さすが郵便局だな」と感心した(笑)。
「危うく犯人に間違えられ取り押さえられるところだったなあ」と私はひとり苦笑いだった。