PTA役員、中学校の補導部長をした

私は息子が中学生の時、学校の補導部長をした。

事の発端はこうだ。この中学校区では、毎年各地区から二人ずつの役員、一人は補導部、一人は交通部だったかな、を出すことになっているらしくて、今年は私の家にその順番が回ってきているとのこと。

そこで妻から「あなた出て行ってよ」と言われ、「なんだか面白そうだな」と思った私は「じゃあ俺が行くわ」と安請け合いをした。

先ずは各地区から補導部の役員が学校に集まり、その中から補導部長を選出するとのこと。

妻から「大変だから部長だけにはならないように」とくぎを刺されていたのだが、興味があった私は内心「受けてもいい」とは思っていた。

しかしながらその集まりに行ってみると、まさにそこは「女性の世界」、なんと「男性は私ひとり」、紅一点ならぬ黒一点だった。

なんだか恥ずかしいような、場違いなところにきたようで、居心地が悪かった。

それから担当の先生の司会で、部長と副部長を決める議事が始まった。

当初は部長を受けてもいいぐらい、に考えていた私だったが、これだけ女性ばかりの世界なのだから「男の私がやるのも違和感があるだろう」と思い、事態を静観していた。

すると、一人の女性が「私副部長をやります」と立候補した。それからまたひとり「副部長ならやってもいいです」という女性が手を挙げた。

けれども、さすがに部長にはだれひとり立候補しようとはしなかった。

そこで、先生が困り「では、副部長に立候補された以外の方たちで、くじを行います」ということになった。

ここで私は先ほど副部長に立候補された方の意味を理解できた。「部長に当たるぐらいなら、あらかじめ副部長を受けといたほうがまし」という算段だったということが。

くじの結果、一人の女性が当たってしまったのだが、その女性は泣きながら「私にはできません」と言いだした。

それを聞いた男性の担当の先生は「そう言われても・・・くじで決まったのだし・・・」いかにも「困った」という感じだった。

教室内にもなんとも言えない空気が漂っていた。

「私でよければやりますよ」と私が口を開いた。その瞬間、女性たちから「えー!!!」という大きな声が上がった。

その声は「驚き」「感嘆」のように聞こえた。

「よくもまあ、自分からやるなんて言ったものだ」「そんな人がいるんだ」というところだろう。

私自身、そんな声が上がるとは思ってもいなかったので少々驚いた。

みんなやりたくないのだから異論はなく、私がやることになった。

補導部長の仕事は、毎月1回ある役員会に出席、地域の役員の人が集まる会合への出席、夏祭り等の見回り等そんなところだったと思う。

この中で、「地域の人が集まる会合」というのが興味深かった。周辺の小中学校の校長先生、教頭先生、補導部の先生、各学校の補導部長、その地域の保護司、警察共助員、愛育委員等々いろいろな立場の方が集まり、子供たちの様子について報告したり話し合ったりした。

「あーこうやって地域の人が集まり、子供たちを暖かく見守ってくれているのだな」「ありがたいことだ」と思うと同時に「こういう世界があるのだな」と、それまで「仕事の世界しか知らなかった私にはとても新鮮だった」。

また、会合があり学校に出向いていくことで、子供たちの様子や先生方の仕事の大変さ、そういうものを垣間見ることもできた。

私にとっては、日頃とは違う世界を見ることができた貴重な一年間だった。

このPTAの世界は、一般の社会とは違いみごとに女性の世界だ、もう少し男性も参加して、女性の視点にプラスして男性の視点も取り入れたら、「もっといいものになるのではないか」そんなふうにも思った。

そのとき私は51歳だった。ずっと営業畑を歩んできている私にとって、いろいろな会合に出て発言することはそんなに苦になることではない。

しかしながら、まだ若い女性のお母さん方にとっては、そういうことが苦痛と感じる人も多いだろう。「できることならやりたくない」正直な気持ちだと思う。

どこの学校も役員決めに苦労していると聞くが、「なんとか良い方法はないか」と考え、各役員がする仕事の内容についてあらかじめ説明をしたところ、「そのくらいならできそう」と「立候補する人が増えた」学校があるという話を聞いたことがある。

学校側もそういう努力はするべきだろう。

実際、私自身もそんなに負担には感じなかった。

それと以前の私がそうであったように、男性も「仕事があるから」と逃げるばかりしないで、積極的に参加するべきだと思う。

「やってみれば、結構面白いものですよ!」