私は大学卒業後、ある会社に入社したのであるが、その会社は半年足らずで辞めて、ある中堅メーカーに再就職した。
入社して2年ぐらい経った頃、転勤で大阪支社に赴任することになった。
私は営業をしていたのだが、まだまだ駆け出しの身で、とりあえず、毎日一生懸命やっているという感じだった。
大阪勤務となり1年ぐらい経った頃、私は北陸地方の得意先の担当になった。
その頃、北陸のある都市に、勢いのいい得意先があった。
この会社は、それまで、地元の老舗の会社に勤めていた方が、そこを飛び出して創業した会社だったのだが、その元の会社とは、折り合いが良くなかった。
うちの会社としたら、老舗の会社との付き合いはあるし、新たにできたその会社も、無視するわけにはいかず、板挟みというか、難しいかじ取りをしなければならないという立場にあった。
頑なに接待の誘いを断る
ある時、その新たにできた会社の社長から「大きな現場の仕事を受注したので、手伝ってほしい」との仕事が舞い込んできた。
まだ駆け出しの私には荷が重く、商談をするため、上司と一緒にその得意先の社長に会いに行くことになった。
商談を終え「では、これで失礼いたします」と上司が席を立とうとすると、
その得意先の社長は、「今晩、食事に行きませんか」と誘ってきた。
横でその話を聞いていた、まだ浅はかだった私は「これはいいぞ、今夜はごちそうが食べれるな」と、内心、ほくそ笑んでいた。(⌒∇⌒)
すると、上司は「ありがとうございます」「けれども、今夜は予定がありますので」と断った。
それでも、得意先の社長は、なんとか食事に誘いこもうと、半ば強引に「行きましょうよ」と誘ってくる。
それに対して上司は「いや、結構です」「予定がありますから」と頑なに誘いを受けようとしなかった。
そのやり取りを横で聞いていた私は「おかしいな、この後は、なにも予定がないはずなんだけど、どうして断るのだろう?」と思った。
なんとか、その場をやり過ごして、その会社を後にした帰り途、私は上司に尋ねた。
「どうして断ったのですか?」と、
すると、その上司は「今はまだ、一緒に食事をする時期ではない」と言われた。
「へぇー、そんなものなのかな」と、私は思った。
その時の私は、そのことに深い意味があるとはわかっていなかった。
社会経験を積むにつれ、わかってきた
その後、私はいろいろな世界で営業として仕事をしてきた。
ある時は接待をされたこともあるし、接待をしたこともある。
わかったことがある。
接待を受けると、借りができたような気がして、どうしても相手主導のペースになってしまうということ。
もちろん、相手方はそれが狙いで接待をしてくるのだ。
私も若い時は、軽い気持ちでごちそうになったりしたことはあるが、そのことに気づいてからは、一切、接待は受けないようにした。
特に、脱サラして独立してからは、絶対に受けないようにしてきた。
どうしても、同席しなければならない場面ができると、そこの支払いは必ず自分が支払うようにしている。
「そんなことで、相手に主導権を握られたくないから!」
支払い伝票を取り合い
面白い話がある。
そういうどうしても食事を同席しなければならない場面に出くわし、相手も、私と同じような考えを持っている人だと、レジに行き、「ここは私が」「いや、困ります、私に支払わさせてください」と、押し問答が始まるのだ。(⌒∇⌒)
あの時、上司が言われたひと言
「今はまだ、一緒に食事をする時期ではない」
後になって、よくわかってきた。
私が26歳の頃だったかな。
そんな上司の下で働けたことを感謝している。