知床峠
次の日、フレぺの滝を見てから羅臼に向かう途中、念のため「出港できるかどうか」確認の電話を入れてみる。
「今日は予定通り出港します」とのこと。
「良かった!」
私は胸をトキメかせながら、羅臼に向かった。
この日の知床峠は、昨日の濃霧がウソのように打って変わって快晴、展望台から眺める景色も最高だった。
羅臼に着くと、簡単に食事を済ませて早めに乗船場所に行った。
受付で、朝の便で「シャチが見えた」と教えていただく。
昨日の船長さんとの話と併せて、期待は高まる。
クジラ・イルカ・シャチ ウォッチング
いよいよ出港だ。
「さあ、シャチに出会えるか」
この時を1年間待った。
昨年来る予定で、飛行機、レンタカー、ホテル、観光船、新幹線とすべての予約を入れていたのだが、コロナ禍と突然の仕事で断念していたので、感慨深いものがあった。
現実が目の前になると、それまでは「シャチが見れたらいいけど、見られるかどうかは、運みたいなものだ」と思っていたが、「ここまでくると見てみたい!」という気持ちが強くなる。
2階のデッキ席に腰かけ、周りの方を見てみると、若い女性のグループ、カップル、老夫婦、本格的な望遠レンズが付いたカメラを持っている方も数人おられた。
デッキの先端にはスタッフの女性が立ち「クジラ・イルカ・シャチがいないか」双眼鏡で四方に目を光らせている。
その後ろ姿がカッコ良かった!(⌒∇⌒)
私も発見できないかと目を凝らして周辺を見渡す。
なんだか「大海原で宝探しをしているみたいだ」(⌒∇⌒)
羅臼港を出港して30分ぐらい経った頃、船の右側にイルカの親子を発見した。
ものすごいスピードで泳いでいく。
船のデッキにいると、海風がまともにあたり、寒い。
長袖シャツにベスト、その上にレインコートを着込み、ライフジャケットを身に付け、ほっかむりをしていたが、それでもまだ寒い。
手はかじかんでくる。
用意のいい人は、手袋をしていた。
イルカを見た後は音無しだった。
「このままイルカを見ただけで終わってしまうのか?」
「そりゃそうだわな、この大海原でシャチを見つけようなんて、そりゃ難しいわ」
船の揺れによる疲れと、寒さもあり、だんだんと弱気にもなってくる。
寒さが一層身に染みて、震えてきた。
あまりの寒さに「もう見なくてもいいから帰ろう」とさえ思えてくる。
※服装に注意
私は乗船する際に、念のため長袖シャツの上にベストを着て、その上にレインウエア(フード付き)を羽織っていたのですが、手はかじかんでくるし、寒くて寒くて震えていました。
海上はかなり寒いので、防寒対策をしっかりしておいた方がいいでしょう。
顔に吹き付ける海風がとても冷たいので、フードがついている服の方がいいでしょう。
乗船しているスタッフの方々は、スキーに行く時のような重装備をされていました。
手袋も要りますね。
天気が晴れていたら、それほどではなかったのかもしれませんが、私が乗船した時は、どんよりとした曇りで、時折、濃霧で前が見えない状況になったりしていたので、余計に寒かったのかもしれません。
陸に近い場所はそうでもないのでしょうが、沖に出て行くと、一層寒くなっていくような気がします。
海上に、2時間30分ぐらいいますしね。
万全の準備をしていた方がいいでしょう。
1階の船室に入ればいいのだろうけれども、そういう気にもなれない。
「いや、諦めたらだめだ」何事も、そう簡単にはいかない。
これからだ!
私も「どこかにシャチはいないか」目を凝らしてあたりを見回す。
出港して1時間30分ぐらい経った頃、同業者の方から
「知床岬の突端にシャチの群れがいる」との情報が入ったので、そちらに行ってみるとのこと。
船は全速力で目的地に向かって走り出した。
吹き付ける風が一層強くなり、寒さも増したが、「シャチが見えるかもしれない」という希望が出てきた分、気持ちが前向きになり耐えることができた。
船内放送で、船長から「通常は知床の突端までは行くことはないので、帰る時間が予定を過ぎてしまいますが皆さん大丈夫でしょうか」とのアナウンスがあった。
時間がないというお客さんはいなかったので、船はそのまま進んで行った。
シャチを発見
目的地を前に、船はスピードを落としゆっくりと進んで行く。
「いた!」
左前方に大きな背びれが並んで見えた。
「シャチだ!」
ついに見ることができた。
今度は、右前方に。
高い背びれが横並びになり、群れを成して泳いでいるのが見える。
7頭から8頭いただろうか
いや、もっといたかもしれない
体の黒い部分、白い部分もはっきりと見えた。
豪快に潮を噴き上げる姿も見えた。
海の中に潜ってはまた出てくる。
潜ると、次はどこに出てくるのかわからないので、辺りをよーく見ておかないといけない。
その雄姿を何度も見ることができた。
やった、ついにやった!
「涙が出そう」そのくらいうれしかった。
船は「動物を刺激しない、ストレスをかけない」という観点から、シャチに必要以上に近づくことはしない。
「そろそろこの場を離れます」とのアナウンスがあり、船はシャチから遠ざかっていった。
満足、満足、大満足!
羅臼港に戻る道中、私は何とも言えない満足感に浸ることができた。
まだ雪が残る知床連山がとてもきれいだった。