私はこの6月末に「かねてから一度は行ってみたいと思っていた知床へ」行く予定をしていた。
岡山から羽田へ、羽田から女満別空港へ、そこからはレンタカーを借りて、網走からオホーツク海沿岸を走り斜里へ、天へと続く道、ウトロ港から観光船に乗船、知床五胡、フレべの滝、知床峠、羅臼港から乗船する観光船では、シャチとクジラとの遭遇を楽しみに、3泊4日、知床を満喫しようと、自分で綿密な旅行計画を立てていた。
既に3月には、飛行機、ホテル、レンタカー、観光船などの予約はすべて済ませ、服を、靴を、旅行バッグも買い、「あとは行くだけ!」と準備は万端だった。
先日、アマゾンで買った旅行バッグが家に届いたところで、妻に「22日から4日間、知床へ行ってくるから」と話したところ、
「ハァー!」
「今?」
「今、この状況で行く?」
「何を考えてるん?」
私が「もう飛行機もホテルもすべて予約してある」
「緊急事態宣言は20日までだし、出発する22日頃には、状況は良くなるやろ」
「大丈夫だ」と反論をしたところ、
「とにかく今はやめて!」
「すぐにキャンセルして」
「コロナが収まれば、自由に行ってくれればいいから」
「いや、シャチが見えるかもしれない時期は今だけしかないから」
「今行かなければまた1年後になる」
「とにかく今は行かないで」
というような水掛け論になった。
私は、妻が反対することは予想していたものの、それが、想像していた以上に激しいものだったので、気持ちが落ち着いたところで考えてみた。
まあ、妻が反対するのも当然だろう。
この状況では行かない方がいい。
それはわかるが、私としては、知床へ行くのは、もう10数年前から考えていたことであり、本当なら昨年行くつもりだったのだが、とてもそんな状況ではなかったので、「今年こそは!」という思いで、3月に予約を入れておいたのだった。
予約を入れてからは、ネットを見ては「あそこにも行ってみよう「ここもいいかも」と、既に気持ちがすっかり知床行きモードに入っていたので、コロナ感染に対する意識が薄れていたのも事実だった。
そこで改めて、ホテル、飛行機、空港、レンタカー、新幹線のコロナ対策を調べてみたのだが、それは「これなら大丈夫ではないか」と思える、しっかりとしたものだった。
ただ、「外食はしないほうがいいだろう」とは思った。
まあ今、妻を説得しようと試みたところで火に油を注ぐだけだろう。
「まだ行くまでには2週間ぐらいある、そのうち感染者数も減っていくだろうから、それからまた話せばいい」、とりあえず矛を収めるることにした。
それからは毎日、北海道の感染者数をチェックしたり、観光船はいつから動くのか等をチェックするのが日課になった。
「なんとか頑張って感染者数を減らしてよぉー!」
でないと、緊急宣言が延長になると、各施設は開かないし、観光船も動かなかったら行く意味も半減してしまう。
もう私は、祈るような思いだった。
今年は、昨年サッパリだった仕事も、年初からはまずまず入ってきて、それらがここで一段落してタイミングもよかった。
また先日は、新たにあるお客さまから事業用の建物の売却依頼を受託させていただき、「気分よく知床に行けそうだった」
しかし、ここで思わぬことが起きた。
その受託させていただいた物件をネットにアップしたところ、1時間から2時間のうちに、ポン、ポン、ポンと続けざまに3人の方から引き合いがあり、その3人ともかなり前向きで「すぐにでも建物の中を見せていただきたい」とのことだった。
私は「わかりました」と答え、すぐに売主さんに連絡を取り、都合の良い日にご案内させていただくことにした。
そして、3人の方を時間をずらして順番にご案内したところ、3人とも「買います!」とのこと。
私の予想では「すぐには売れないだろう、早くて半年、長ければ1年や2年はかかるかもしれない」と思っていたので、これは予想外のうれしい展開になってきた。
それはとてもありがたい話なのだけれども、物件は一つしかない。
私は売主さんと「どうしましょう?」「困りましたな!」と、顔を見合わせた。(⌒∇⌒)
私は「こんなこともあるのだなあ」と思いつつ、知床旅行も気になるところなので(⌒∇⌒)、頭の中で、今後の商談のスケジュールを考えてみた。
「知床に行く前に契約をしていただくか」いや、それは時間的に厳しいから、ちょっと間は空いてしまうが「知床から帰ってからにしていただこうか」と、自分の勝手のいいように考えていた。
「でも待てよ!」
普通では考えられないようなことが起きている。
ここで注文が入ってきたということは、「知床へ行くのはやめたほうがいいぞ」と言われているのかもしれない。
「今は行くべきではないだろう」
「仕事を頑張れと」
行かなければ、契約までスムーズな日程が組めることになる。
しかしなあ、ここまで準備してきたのに、
ここで断念するのは・・・・・・・・・
もうこの答えはハッキリしている。
「行かない方がいい」
そして、いただいた仕事に集中することだ。
今はまだコロナ感染の心配はあるし、行く直前に仕事も入ってきた。
それでも強行して行くのは良くないだろう。
もし、旅行中に感染してしまったら、帰ってからすぐにお客さんにお会いするのだから、移してしまう恐れだってあるし、それこそ、契約どころではなくなってしまう。
そんな不安もつきまとう。
私は決断した。
「今回はやめておこう!」
けれども、決断はしたものの「取り消す」という行動ができずに、時間だけが過ぎていった。
・・・・・・・・・・・・
一昨日の日曜日の朝、
もうこれ以上、キャンセルを先延ばしするとキャンセル料が発生するというギリギリのところで、
ついに、思い切って「取り消し」のボタンを押した。
飛行機、レンタカー、ホテル、観光船、新幹線とすべてキャンセルした。
「来年また予約します!」と心のなかで呟きながら。
なぜか、その日の競馬はよく当たった。(⌒∇⌒)