正直不動産 傾いている家を売ってはいけない

不動産業をしている私は、現在、NHKで放送されている「正直不動産」というドラマを毎週楽しみにしている。
見ていると、「お客様に真実を伝えること」が、いかに大切かがよくわかる。

私にも以前、こんなことがあった。
数年前だったかな、
ある中古住宅の売却依頼を受けた時のこと、
この住宅は、所有者が賃貸で貸していたのですが、賃借人が出て行かれたため、売りに出された。
確認したところ、まだまだ住めそうだったので中古住宅として売りに出したところ、その住宅がある場所は、人気地区だったので、間もなく買い手が現れた。

その買主は近くにある工務店で「購入後、リフォームをして再販する」とのことで、念のため、家の調査をさせてほしいということになった。
調査当日、専門の器具を持参され、いろいろとチェックされていたのだが、傾きを調べられた後、「申しわけありません、この家は傾いていて(基準値を数cm超えていた)、再販する際に、保証をつけることができないので買えない」ということになった。

「一度は買うと申し上げたのに、誠に申しわけない」と恐縮しきりだったのだが、そんなに傾いているとは知らなかった私は「いや、こちらこそ、売る前に傾きが分かり良かったです」とお答えした。

「これは中古住宅として売ることはできない」と判断した私は、以降、土地として売り出すことにした。
買主が購入後、解体撤去して建て替えるということにして。

それでも次から次に引き合いが入ってきたのであるが、その中に、不動産業者がいた。
その業者は、私が「家が傾いているから解体して建て替えになりますよ」とお話しているにも関わらず、「いや、当社はリノベーションするのでだいじょうぶです」と言われる。

私は不動産業を始める前に、新築住宅の営業を11年間やっていたので、それが、「リノベーションをすれば直せるものなのかどうかの判断ぐらいはできる」また、それが可能なら、最初に買いたいと言ってくださった工務店の方もそうしただろう。

そこで私が「それは無理ですよ」と申し上げたところ、「当社にはプランナーがいるので、見に行かせます」と言われる。
私は「どんなプランナーを寄越して、どんなことを言うのだろう」と、一応、住宅を見てもらうことにした。
当日、来た人は、プランナー?というにはほど遠く、ぜんぜん知識を持ち合わせていなかった。
私の方が、よほど詳しかった。

聞くと、既に買い手がいて、リフォームをして売りたいとのこと。
私は「この傾きを直すことは難しい」「売ることはやめた方がいい」と進言した。
私が想像するに「たぶん、リフォームをして2,700万円ぐらいで売ろうと考えているのだろう、買主にしてみれば、住宅ローンを組んで終の棲家にする予定だろう、それは、買主のためにならない、やめたほうがいい」と思えた。

私は「この物件は購入後、この建物を解体撤去して建て替えをする人に売りますので」とお断りした。

結局、1か月後ぐらいに、「建て替えをします」というお客さんが現れたので、その方に買っていただいた。

では、一般の方が、こういう家を買わないようにするには、どうすればいいいのか?

上記のケースでは、家が傾いているということを、それまで、その家を借りて住んでいた人も、売主も気がついていなかったし、お恥ずかしいことに、不動産業者の私も気がついていなかったのだから、一般の方が、この傾きを見つけるということは、なかなか難しいように思われる。

そこで、安心して既存住宅を購入したい場合には、建物状況調査(インスペクション)を受ければいいと思います。
詳しくは、当サイトの「中古住宅購入 建物状況調査、契約、引き渡しまでの流れ」に記載してありますので、参照してください。

また、誠実で信頼できる不動産業者、担当者に依頼することでしょうね。

「正直不動産」の主人公である永瀬さんのような人に!(⌒∇⌒)