相続対策を必要とする背景
超が付くほどの高齢化社会を迎え、それに比例して相続の問題も増えてきています。「相続をどうするのか」この問題には誰もが直面するようになります。
いざ事が起きてから「どうしよう?」ではなく、まだ元気なうちに家族とも話し合い、相続人のみんなが納得できるような相続にしたいものです。その方法として「家族信託」をご紹介いたします。
「ないからもめる」
「うちは財産なんかないから関係ないよ」・・・・・そんなふうに考えている方は多いのではないでしょうか、けれどもそういう方こそもめる可能性が高いのです。「ないからもめるのです」。
家庭裁判所に持ち込まれる相談案件のうち3件に1件弱は相続関係で、そのうち遺産分割事件の約70%は遺産額が5,000万円以下だそうです。要はない人ほどもめているのです。そして、その事件数はこの約15年で約1.5倍に増加しているそうです。
「金持ちケンカせず」とも言われたりしますが、お金持ちの人は「あらかじめ相続対策をしている」ことも影響していると考えられます。
それまで仲が良かった兄弟が、相続がきっかけで悪くなったというような話を聞くことがありますが、そんな悲しいことにならないためには「前もって対策をしておく必要があります」。
その対策の方法として最近増えてきている「家族信託」について説明させていただきます。
家族信託による相続対策とは
高齢になり、病気にかかったり、認知症が進んだりすると、誰かに頼らざるを得なくなります。けれども、現金や不動産は他人に任せるわけにはいきません。
相続資産は「自宅と土地」という人は多く、相続資産に占める不動産の割合は約50%になります。
家族信託は「財産の所有者(委託者)がまだ元気なうちに、信頼できる妻や子供(受託者)に何を託すのかを決めることができる」のです。
またその内容について、「委託者と受託者は、ある程度自由に決められる」のです。
つまり、遺言代わりになり「遺言よりは気が楽」なのです。
家族信託による相続対策例
・その1 家族信託を使い、母親の財産を母親のために活用する。
現在、母親と娘さんが二人で暮らしている。娘さんは、最近認知症が進んでいく母親のことを心配している。そこで、母親とも話し合い、「将来は、今住んでいる家を売却して、そのお金で母親は介護施設へ入る費用及び生活費を捻出し、自分はもう少し小さな家を購入することにしている」。
家族信託の契約はこうなります。
母親(委託者)と娘さん(受託者)の間で、上記の内容の信託契約を結ぶ。その際、母親が所有する自宅の土地と建物の名義を娘さんの名義に変更する。
この時点では実質の所有者は母親ですが、認知症が進んでからでは売却も自由にできなくなるため、先に娘さんに所有権を移転しておくことにより、将来、売却して上記のプランを実行することが可能になるのです。
もちろん、母親は信託契約を結んだ時点で、契約の内容を十分理解しています。
・その2 父親がアパートを所有していてその管理や賃貸契約をしている。
賃貸契約・売買・金融機関からまとまったお金を借り入れる等、これらの手続きは不動産所有権を持つ本人にしかできません。
そのため、もし父親が認知症になったりすると、妻や子供はこれらのことが自由にできなくなります。
そうならないためには、父親(委託者)が元気なうちに、妻や子供を(受託者)とする信託契約を締結し、管理目的やその内容を決めておきます。そして、アパートの名義は妻や子供に移転します。
そうしておけば、もしも、父親の認知症が進んで判断能力が失われたとしても、妻や子供で賃貸契約あるいは売却等の手続きを進めることができるのです。
まだ、父親が元気なうちは、今までどおり家賃収入は父親(受益者)が受け取るようになります。
・その3 他にも、事業承継とか、ペットの世話をしてもらう「ペット信託」というような契約も可能だし、いろいろなケースでの活用が考えられます。
いずれ皆さんが直面する相続、その相続をスムーズに行うために「家族信託」を考えてみられては如何でしょう。