中古住宅購入 建物状況調査、契約、引き渡しまでの流れ 

不動産を購入するということは、多くの方にとっては一生に一度あるかないかのことであり、それは、人生のなかで一番大きな買い物になると思われます。

そのため、何をどうしたら良いのか,、不安にもなります。

「その不安を少しでも和らげて、いただくことができたら」と思い、不動産を取り扱う専門家の立場から、「物件探しから、インスぺクション、契約、引き渡しを受けるまでの流れ」を、説明させていただきます。

物件を探す

「中古住宅を購入したい」→「ネットで検索したり、折込み広告等で物件を探す」→「取扱いしている不動産業

者に連絡を入れて、物件を見せてもらう」→「前向きに検討したい」→「物件の確認」

「付帯設備表」及び「物件状況確認書(告知書)」を活用して、物件を確認しよう

付帯設備表及び物件状況確認書(告知書)とは、

これから売買しようとする「物件の状況が現在どのような状況であるか」「欠陥や不具合はないか」「またどのような状態で買主に引き渡すか」を、明確にするため、売主が、付帯設備表及び物件状況確認書に記載し、買主に対し告知するものです。

買主は、その告知を受け、「購入するか、しないか」の判断材料とします。

物件状況確認の項目は、下記に記載しているものの他、売買対象になるすべてのものが対象になります。

建物 

・雨漏り ・シロアリ被害 ・建物の傾き、不具合、腐食 ・給排水設備の故障、漏水 ・増改築、修繕、リフォームの履歴 ・耐震診断の結果のあるなし ・その他

付帯設備 

・キッチン ・浴室 ・洗面 ・トイレ ・エアコン ・照明器具 ・建具 ・収納 ・サッシ ・網戸 ・畳 ・庭木 ・門塀 ・車庫 ・その他

土地

・境界の確認 越境のあるなし ・地盤の沈下、軟弱 ・騒音 ・電波障害 ・近隣の建築計画

・浸水等の被害  ・事件、事故、・火災 ・近隣との申し合わせ事項 ・その他

物件状況確認書の説明を受け、確認のうえ、「購入したい」ということになれば、売主に対して「買付証明書」を提出しましょう。

※「物件のある場所には、どんな災害が起きることが予想されるのか」、ハザードマップ(洪水・内水氾濫・土砂・津波・地震等)で確認しておきましょう。(ハザードマップの確認は、私が住んでいる岡山市では、岡山市、岡山県のサイトで確認ができます。皆様がお住いの場所でも、情報発信されていることと思われますので確認してみてください)。

更新
令和4年5月現在、以前から重要事項説明が義務づけられていた、宅地防災等規制法・土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域・津波災害区域・津波災害特別警戒区域に加えて、下記についても重要事項説明が義務づけられています。

水防法施行規則の規定により、市町村の長が提供する図面(水害ハザードマップ)における当該宅地の所在地
水害ハザードマップの有無 洪水・雨水出水(内水)・高潮
水害ハザードマップにおける宅地の所在地           

買付証明書に署名、押印して売主に提出しよう

買付証明書とは、

購入申込書と言ったほうがわかりやすいかもしれません。

この建物を、「購入したい」という意思表示を売主に対して表明するもので、買付証明書には、購入希望額・契約希望日・手付金・代金決済予定日・希望する特約条項等を記入、署名・押印して、仲介している不動産業者を通じて、売主に渡します。

買付証明書を受け取った売主は、その内容でよいかどうかを検討し、売主と買主の間で話がまとまれば契約となります。

契約の前に、宅地建物取引士から重要事項の説明を受けます

契約の前に重要事項の説明を受ける

重要事項の説明とは、

買主が買おうとしている物件はどういう物件なのか、下記のような重要事項について、宅地建物取引士が買主に対して説明をし、その説明を受けた買主は、購入するかどうかの判断をします。

重要事項

・売主の表示 ・不動産の表示 ・構造 ・面積 ・権利関係 ・どういう法令上の制限が存在するのか

・飲用水、ガス、電気、排水施設の整備状況 ・融資未承認の場合の契約解除期限 ・建物状況調査実施の有無

・土砂災害警戒区域内か外か・津波災害警戒区域内か外か ・契約の解除や損害賠償 ・他にも諸々あります

・「購入するかどうかを左右するような重要事項」については、必ず説明しなければなりません。

ポイント

・実際の取引においては、契約当日に、先に重要事項の説明を受けた後、続けて契約というケースが多いのですが、重要事項の説明は、専門用語が多く、一般の人がその場で聞いて、すぐに理解できるようなものではありませんので、事前に重要事項説明書(案)を見せていただき、確認されておいたほうがよいように思います。

・融資未承認の場合の契約解除期限に注意

融資を受けられる場合、契約後、融資手続きをされるようになりますが、もし、融資が受けられないとなった場合には、契約を無条件に解除でき、契約時に売主に渡した手付金は返してもらえます。

その契約解除ができる期限は、通常の場合、契約日から、1か月から1か月半程度の期限を設定します。融資承認が下りるまでの時間は、融資を受ける銀行により違いますので、あらかじめ、銀行に確認されておいた方がいいでしょう。

平成30年4月1日より、宅地建物取引業法の改正があり、重要事項説明の際、下記の「建物状況調査を実施しているか、していないか」「実施している場合は、建物状況調査(インスぺクション)の結果の概要を説明すること」になりました。

建物状況調査(インスペクション)について

建物状況調査(インスペクション)とは、

既存住宅状況調査技術者が、建物の基礎、外壁など建物の構造耐力上主要な部分及び雨水の侵入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化・不具合の状況を把握するため、目視、計測等により、調査します。

検査所要時間は、建物の大きさにより異なりますが、戸建て住宅の場合、おおよそ約2時間~3時間、マンション(一戸)で約1時間~2時間です。

検査料 参考例 戸建て住宅の場合 165㎡未満 45,000円、マンションの場合(一戸) 50,000円

(検査料は、物件の広さや保証の種類、検査する会社により異なります)

オプションとして、給排水管路検査・シロアリ検査・地盤点検システム等もあります。

注意 建物状況調査を依頼する際、建物状況調査後に、既存住宅かし保証保険を利用しようと考えられている場合には、建物状況調査と既存住宅かし保証の両方を取扱いしている会社に頼まれたほうがいいです。なぜなら、建物状況調査を実施する会社が、既存住宅かし保証保険の取り扱いをしていなければ、既存住宅かし保証保険を利用する際に、その保証会社の調査を改めて受ける必要があるからです。

建物状況調査をするメリット

・専門家の調査により建物の状況が把握でき、より安心して購入の判断をすることができます。

・購入後のリフォームやメンテナンス等の予定を見込んだ取引が可能となります。

平成30年4月1日の宅地建物取引業法の改正により、建物状況調査(インスぺクション)について、追加になった項目

1.媒介契約締結時に、媒介をする不動産業者は、媒介依頼者に対し、建物状況調査の概略を説明し、媒介依頼者が、建物状況調査を希望される際には、建物状況調査を実施する者をあっせんしなければならない。

※媒介契約締結時とは、「売主から、不動産業者が物件売却の依頼を受けて媒介契約を締結する時」もしくは「買主から不動産業者が物件購入の依頼を受けて媒介契約を締結する時」のことです。媒介依頼者とは、売主もしくは買主のことです。

「実際には、売主側が建物状況調査をすることになるのではないか」と考えられますが、それは、義務ではないので、売主が実施していなければ、「買主が希望してインスペクションを実施することもできます」。

2.重要事項説明時に宅建業者がインスぺクションの結果を買主に対して説明する。

3.売買契約締結時 基礎や外壁など、建物の構造耐力上主要な部分等の現況について、売主・買主が相互に確認した事項を、宅建業者が売主・買主に書面で交付する。

対象となる物件

既存住宅(中古の住宅です) ・戸建住宅 ・分譲マンション(一部屋) ・アパート一棟(小規模共同住宅)

・マンション一棟(大規模共同住宅)

※上記の建物状況調査(インスペクション)は、「構造耐力上主要な部分」及び「雨水の浸入を防止する部分」が検査対象となり、その調査方法は、目視・計測を中心とする非破壊検査です。

破壊を伴う検査(外壁を壊したり、床を剥がしたり、など)は基本的に行いません。

この建物状況調査(インスペクション)は、住宅の補修の必要性を把握するための「基礎的なインスペクション」で、住宅の不具合がすべてわかるわけではなく、瑕疵の有無を判定するものでも、瑕疵がないことを保証するものでもありません。

「基礎的なインスペクション」だけでは不安な場合は、より詳細な調査を行うことをお奨めします。

建物状況調査(インスぺクション) まとめ

この建物状況調査については、今年の4月に施行されたばかりであり、媒介契約の際、宅建業者は、売主、買主に対して、建物状況調査についての説明をし、調査を希望される場合には、調査をする者をあっせんしなければなりませんが、調査を実施するかしないかは、売主の判断になるため、市場には「建物状況調査を実施している物件」と「建物状況調査を実施していない物件」の両方が混在することになります。

(売主が実施していない場合は、買主が希望すれば、実施することができます。その場合には、建物状況調査を実施する時間が必要になるため、その後の契約までのスケジュールが変わってくる可能性がありますので、早い段階で、宅建業者を通じて、売主に伝える必要があります)。

そうなると、買主にとって安心できる物件は、「建物状況調査を実施し、その検査に適合している物件」になりますよね。

適合している物件であれば、その他の条件を充たせば、既存住宅かし保証保険を利用することも可能になり、より安心が得られるとともに、税制面での優遇を受けられる可能性もあります。

他方、売主にとっても、建物状況調査の検査に適合している物件であれば、その価値を価格に反映することができますし、安心して売り渡すことができるようになる、というメリットがあります。

現時点では、手探り状態のような面もありますが、「この建物状況調査(インスぺクション)は徐々に浸透していくのではないか」と思われます。

重要事項の説明を受け、その内容に納得し、「購入をしよう」ということになれば、重要事項説明書に署名・押印しましょう。

次は、いよいよ「契約の締結」になります。

契 約

主な契約条項

・売買代金 ・手付金 ・境界の明示 ・売買代金の支払い時期 ・所有権移転の時期 ・引き渡し ・所有権移転の登記の申請 ・付帯設備の引き渡し ・印紙代の負担 ・契約違反による解除 ・瑕疵担保責任 ・融資利用の場合 ・特約条項 ・他にも諸々あります

上記のような条項について、不動産業者より説明がありますので、その内容について、売主・買主双方でしっかりと確認をします。

そして、確認のうえ、「これでよし」となれば、売主・買主ともに、契約書に署名、押印をします。

ポイント

・重要事項説明の時にもお話しましたが、この契約条項についても、一般の人には、日頃聞きなれない文言がたくさん出てきますので、事前に、契約書(案)を見せていただき、確認をされておいたほうが良いように思います。

・契約時に、決めることになる代金決済の時期は、融資を受けられる場合、その準備が整い、融資の実行が可能になる期間をみておけばいいでしょう。

通常は、そのあたりを考慮して、契約日から代金決済までの期間を、1か月半から2か月ぐらいに設定します。

現金での取引をお考えの方は、支払いの準備ができる期間をみられておいたらいいでしょう。

・契約書にも、融資未承認の場合の解除期限を記載するようになっていますので、重要事項説明書に記載された期限と違いがないか、確認しておいてください。

契約時に必要な費用

・手付金 金額は、売買契約金額の1割程度が目安です。

・契約書に貼付する収入印紙(売買契約代金によります)

・仲介手数料は、売買金額 ×3%+60,000円+消費税、となりますが、このうち、契約時に半分、代金決済時に半分という場合もあれば、代金決済時に全額という場合もあります。

契約が完了しましたら、速やかに融資の手続きをしましょう。

融資の準備ができたら、代金決済です。

代金決済・所有権移転・引き渡し

売主、買主、司法書士、仲介する不動産業者の担当者等が、買主が融資を受けられる銀行に集い、司法書士により、間違いなく取引ができることの確認ができたら、買主は売主に残代金を支払い、売主は買主に、権利証等を渡します。

売主から、建物の鍵の引き渡しを受けます

買主は、受け取った権利証を司法書士に渡し、司法書士は法務局に行き、買主への所有権移転登記をします。

一週間前後で登記が完了すると、新しい権利証が買主に届けられます。

代金決済時に必要な費用

・残代金

・登記費用

・仲介手数料(契約時に必要な費用を参照)

これで、取引はすべて完了です。