どれだけこの瞬間を待ち続けたことだろう。

日本人の海外メジャー制覇。

樋口久子が全米女子オープンを制して以来42年ぶりだそうだ。

その間、青木が尾崎が中島が、岡本綾子、宮里藍ちゃんが、挑み続けては、その都度跳ね返されてきた大きく立ちはだかる壁を、若干二十歳の女の子がその壁を突き破ってくれた。

それも、まだプロになって1年、今年の5月に初勝利をあげたばかりで、7月には2勝目をあげ、今回は海外初の試合、それが全英女子オープンというメジャー大会だった。

昨夜、私は3ホール目でダブルボギーを叩いた後の4ホール目からテレビ観戦を始めたのだが、3位に順位を下げたところで、もう寝ようかな、なんて思っていた。

しかし、日本人選手がメジャーに勝つチャンスがある戦いをすることは、滅多に観られるものではないと思い直し、もう少し戦いの行方を見届けることにした。

後半に入り、トップのサラス選手は、ゾーンに入っているかのごとく、次から次にバーディを奪取しスコアをドンドン伸ばしていく。

渋野選手、12番ホールを迎えてトップとは2打差。

パー4のこのホールは、安全策を取り刻んでいくか、それとも、イーグルチャンスを狙い池ポチャのリスクはあるが、池越えのワンオン狙いで行くかの選択を迫られる。

この段階で池ポチャになると優勝のチャンスはなくなるだろう。

ここで渋野選手は迷わずドライバーを選択しワンオン狙いに出た。

 

せっかく優勝のチャンスがあるのに狙わない手はない。

刻めば悔いが残る。

「ここは勝負」だとばかりに。

 

結果は、その作戦が見事にあたりバーディを取った。

上りの数ホール、渋野選手は、サラス選手や名だたる世界の一流プレーヤーを敵に回し、一歩も引かない堂堂とした戦いぶりであった。

この渋野選手、次のホールに行く途中は笑顔を絶やさず、ファンとタッチをしたり、時にはサインボールあげたり、グローブにサインをしてあげたりと、ファンへサービスも欠かさないので、とても人気がある。

その笑顔をメディアは「シンデレラスマイル」と呼んだりしているのだが、プレーに入る前の表情に「勝負師」としての顔も垣間見ることができる。

 

圧巻だったのは最終の18番ホール。

ここまでトップとはタイ。

このホールでバーディを取れば渋野選手の勝ちだ。

思いっきりのいいスイングで2オンして、多少距離はあったがバーディチャンスにつけた。

 

ラインを読みながら彼女は微笑んでいた。

「これが入れば優勝なんだろうなあ!」

「なんだか夢みたい!」とでも思っていたのだろう。

その姿は緊張なんて、ぜんぜんしていないように見えた。

 

運命のパット。

打った瞬間、そのボールは勢いよくカップに向かい「コツン!」という気持ちの良い音を響かせてカップイン。

渋野選手がメジャーに勝った瞬間だった。

「やった、入った!」

思わず声が出て鳥肌が立った。

 

「チャンスがあれば強気に攻めていかなくてはいけない!」

「そうでなければ、夢をつかみ取ることはできない!」

 

この試合での、渋野選手の「思いきっりのいい強気の攻め」を観ていてそんなことを思った。

 

渋野選手は岡山市の出身、

それも、渋野選手は子供の頃、私がゴルフに夢中なっていた時に、よく通っていた瀬戸内市にある打ちっぱなし場のパルグリーンや長船カントリークラブでよく練習したりラウンドしていたとのこと。

そんなこともあり、より身近な存在に感じることができる。

 

日本人選手がメジャーに勝つ瞬間なんて、そうそう観えるものではない。

 

その瞬間をライブで観えて、とても幸せな気分だった!

 

渋野選手、おめでとう!

 

これからもその思いっ切りのいいスケールの大きなショットで、数々のメジャーに勝つことを期待しています。