日曜日の宝塚記念、それまで曇り空ではあったが、雨の気配など全くなかったのに、レース直前、嵐のような大雨になった。
そして、馬場状態は一気に良馬場から重馬場になった。
となると、重馬場を得意とする2番人気のメイショウタバルには追い風となる。
この馬は、昨年のこのレースで、稍重の馬場を逃げ切って勝っている。
レースは、2番手につけたメイショウタバルが、ゴールまで200mの辺りで、逃げるコスモキュランダを捉え、猛然と追い込んできた1番人気のクロワデュノールを首差抑えて勝利した。
メイショウタバルの馬主は、昨年亡くなられた松本オーナーである。
レース直前、突然の大雨は、松本オーナーが天国から愛馬を後押ししたとしか思えないのだ。
それも、レースが始まると雨は弱まり、表彰式の時には止むという、すべては松本オーナーが「愛馬のためにお膳立て」をしてくれたのではないかとさえ、思えてくるのだ。
忘れられない感動シーンがある。
20年前の日本ダービーでのこと。
このレースはメイショウサムソンが勝利したのであるが、ゴールの瞬間、東京競馬場のスタンドで抱き合って喜ぶ家族の姿を、テレビカメラが捉えていた。
この家族は、このレースで勝ちダービー馬となったメイショウサムソンを生産した牧場の家族だった。
牧場は、日高地方の浦河町にあり、家族で営んでいる小さな牧場だと聞いた。
競馬界のホースマンなら誰もが一度は勝ちたいと夢見るダービー、そのダービーに勝ったのだから、その喜びはひとしおだったことだろう。
私はその家族が抱き合って喜んでいる姿を見て、心から「良かったなあ!」と感動したものだった。
メイショウサムソンの馬主は松本オーナーである。
松本オーナーは、ダービーに勝った後のインタビュうーで、「夢をあきらめずに追いかけていれば、叶えることができるのだ、ということを、この馬に教えてもらった」とおっしゃられていた。
また、このオーナーは、「血統のいい馬で勝つのではなく、そうではない馬で勝つことにこそ、競馬の醍醐味がある」とも言われていた。
日本ダービーで勝ったメイショウサムソンは、まさにそういう馬でした。
日高地方浦河町の小さな家族牧場の生産、血統もどちらかというと地味、そんな馬が、競馬関係者なら誰もが一度は勝ちたいと願う日本ダービーに勝った。
昨年の秋、話題になった日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」のドラマで、人材派遣会社の社長である馬主が「日高の馬で勝つことに意味がある」と、日高の馬を買い、幾多の苦労を重ねながらG1レースに勝つという話があったが、私はこのドラマを見ながら、松本オーナーのことを思い出していた。
たぶん、この小説の作家も松本オーナーのことを思い浮かべながら、この話を書いたのではないかな。
ただ、ドラマの中の馬主は、ガラッパチ?という感じでしたが、松本オーナーは、品のある紳士です(⌒∇⌒)
ダービーに勝ったメイショウサムソンの主戦騎手は石橋騎手だったが、翌年の天皇賞(春)を制した後、武豊騎手に乗り替わりをした。
この時、松本オーナーは石橋騎手にきちんと乗り替わりの説明をしたという。
そして、石橋騎手は気持ちよく、武豊騎手に馬の特性を丁寧に教えたという。
石橋騎手は、武豊騎手の小学校の先輩にあたる。
その後、石橋騎手は騎手を引退して調教師になり、松本オーナーからメイショウタバルを預かることになり、昨年と今年の宝塚記念でG1レースを勝つことになる。
そして、その背中には、武豊騎手が騎乗していた。
昨年、宝塚記念でメイショウタバルが勝利した時、松本オーナーと石橋調教師と武豊騎手の3人が抱き合って喜んでいた姿は、とても感動的だった。
この時の優勝インタビューで武豊騎手は、「馬がつないでくれる縁」「人がつなぐ馬との縁」と言われ、武豊騎手は「こんなにうれしいことはない」「涙が出るほどうれしかった」と話していた。
そして今年もまたメイショウタバルは、石橋厩舎で最高の状態に仕上げられ、武豊騎手に導かれ優勝した。
松本オーナーも天国で、さぞかし喜ばれていることだろう。

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